2026.09.29 /

初めての星空への憧憬

あの夜の記憶は、今でも胸の奥で静かに光り続けている。
小学生だった私は、毎年夏になると母の故郷である島根への帰省を心待ちにしていた。横浜の我が家から島根までは遠く、渋滞を避けるため父はいつも真夜中に車を走らせてくれた。
眠い目をこすりながら後部座席で揺られていると、やがて街の灯りが遠ざかり、窓の外は深い闇に包まれる。
帰りの道中、鳥取を通りかかったとき、ふと空を見上げた私は息を呑んだ。そこには見たこともない満天の星空が広がっていた。
まるで天の川が手を伸ばせば届きそうなほど近くに感じられ、無数の星たちが宝石のように煌めいている。
「お父さん、車を止めて」
私の声に、父はバックミラー越しに私の興奮した表情を見つめ、静かに微笑むと高速道路を降りてくれた。
車から降りて見上げた星空は、都会では決して見ることのできない圧倒的な美しさだった。父と私は無言で空を見つめ続け、宇宙の壮大さに心を震わせた。
あれから何年も経った今、私は自分の子どもたちを連れてプラネタリウムに通っている。あの夜の感動を、次の世代にも伝えたいと願いながら。