2026.09.29 /
厳冬の剱岳の星空
大学2年時の山岳部の合宿は厳冬期の北アルプス剱岳の小窓尾根。
行程は小窓尾根より三の窓にBCを設け、チンネ(日本三大岩壁)登攀、本峰(2999m)アタックを予定し、前年秋に三の窓へのデポ(食料・装備)の荷揚を敢行した。
11月始にS先輩とデポ缶を背負い早月尾根より本峰を越え三の窓まで達し、ジャンダルム(チンネ前衛壁)の岩壁にそのデポ缶をくくり付け、
チンネを登攀、氷の張り付く岩壁でビバーク(緊急露営)を強いられた。
やっと座れる岩棚に腰を下ろし、満点の星と富山の街灯りを眺めた。
さすがに11月のこの高さ(2750m)、寝袋なしの夜は寒く眠る事は出来ず長い夜を耐えた。
その時、S先輩が話し始めた。
「俺、高校時代天文部にいたんだ。星にはいろいろな物語があるんだ。昔ギリシャの羊飼いが夜空を眺めながら星と星を結んで空に絵を描いたんだ」と。
私はS先輩の満天の星に描く指先を目で追った。
4年後トルコのエーゲ海側の自転車旅で牧羊犬に吠えられた時、少年が棒を振り上げながら空高く口笛を吹いてその犬を呼び寄せたのである。
あのような羊飼いが隣国ギリシャの夜空の星に絵を描いたかS先輩を思い出す。