2026.09.29 /

Episode 1:渡部潤一 京都産業大学神山宇宙科学研究所 所長

初めて夜空を意識したのがいつの頃だったのかを考えるたびに思い出す景色がある。
おそらく、幼い頃住んでいた社宅の庭で、親父の肩車にのって眺めた空だ。東の山の端から顔を出したばかりのまん丸な満月がぽっかりと浮かんでいた。
物心がついたのは福島県でも比較的なだらかな地形が続く阿武隈山地の中の棚倉町というところだった。小高い山々が四方を囲んでいるが、子供ながらに山は大きく見えており、その山の端に上った真ん丸の月の輝きに驚いていた覚えがある。夕暮れではあったが東の空はオレンジ色にはならずに青色のままで、そこに真っ白な水晶玉のような月が浮いていたのがとても印象的だった。
それからだろうか、夜空を見上げる機会があれば、月を探し、星を探していた。もしかしたら、その頃にはすでに望遠鏡が欲しいとねだったのかもしれない。小学生になる頃には、小さな小さな屈折望遠鏡がすでに手元にあったからだ。
年に何度かは阿武隈山中に行く機会があるが、今でも満天の星や輝く月が同じ顔をして迎えてくれるのは嬉しいものである。

渡部潤一 京都産業大学神山宇宙科学研究所 所長(2025年9月1日公開)