2025.09.01 / トピックス

【100周年事業/同時企画】あの人の心に残る、はじめての星空


各界の著名の方々に、初めて心に残った星空の記憶を寄稿いただく【100周年事業 「心に残る、はじめての星空」】の同時開催のシリーズ企画です。

※ 以下敬称略 

Episode1 : 渡部潤一 自然科学研究機構 国立天文台 上席教授(9月1日公開)
Episode2 : 井上あずみ 歌手(10月1日公開予定)
Episode3~: 順次公開予定

【100周年事業】心に残る、はじめての星空はこちら

Episode 1:渡部潤一 自然科学研究機構 国立天文台 上席教授

初めて夜空を意識したのがいつの頃だったのかを考えるたびに思い出す景色がある。
おそらく、幼い頃住んでいた社宅の庭で、親父の肩車にのって眺めた空だ。東の山の端から顔を出したばかりのまん丸な満月がぽっかりと浮かんでいた。
物心がついたのは福島県でも比較的なだらかな地形が続く阿武隈山地の中の棚倉町というところだった。小高い山々が四方を囲んでいるが、子供ながらに山は大きく見えており、その山の端に上った真ん丸の月の輝きに驚いていた覚えがある。夕暮れではあったが東の空はオレンジ色にはならずに青色のままで、そこに真っ白な水晶玉のような月が浮いていたのがとても印象的だった。
それからだろうか、夜空を見上げる機会があれば、月を探し、星を探していた。もしかしたら、その頃にはすでに望遠鏡が欲しいとねだったのかもしれない。小学生になる頃には、小さな小さな屈折望遠鏡がすでに手元にあったからだ。
年に何度かは阿武隈山中に行く機会があるが、今でも満天の星や輝く月が同じ顔をして迎えてくれるのは嬉しいものである。

【略歴】
1960年福島県会津若松市生まれ。
理学博士。東京大学理学部天文学科卒、東京大学東京天文台、自然科学研究機構国立天文台副台長を経て、現在、上席教授・天文情報センター長、総合研究大学院大学教授。
国際天文学連合では惑星定義委員として準惑星という新カテゴリーを誕生させ、冥王星をその座に据えた。