2018.08.23 / トピックス

高知で育まれた五藤光学研究所

昨年発表した新型プラネタリウム「オルフェウス」の1号機を納入した高知県(高知市)は、弊社創業者 五藤齋三 のゆかりの地です。齋三が高知で星への興味や関心を育み、自らの郷里で天文普及に力を入れたことが、今日の五藤光学研究所に繋がっています。ここでは、高知と関わる余話をいくつかご紹介します。

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高知で〝天文〟に出会った五藤齋三(弊社創業者)

オーテピア

株式会社五藤光学研究所の創業者五藤齋三(ごとうせいぞう)の家系は、代々土佐山内家(山内旧侯爵家)の家老職を勤めた家の分家にあたります。本家は高知県安芸の城主であり、現在でもその末裔のご自宅が高知城の堀端に現存しています。本家初代の弟である五藤三郎右衛門から数えて十二代目が五藤齋三にあたり、その曾孫が現社長の五藤信隆です。
齋三が十九歳となる明治四十三年(1910年)、ハレー彗星が地球に最接近しました。自宅から空一面に長く横たわるハレー彗星の姿を見たのが五藤齋三の〝天文〟へのめざめであり、今日の五藤光学研究所に繋がる記念すべき出来事でした。その当時、まだ〝天文〟は特殊な学問ではあったものの齋三は異常なまでの興奮を覚えて〝天文〟に興味を示しました。そしてある日、書店で『星学(須藤伝次郎著)』を発見し、一生懸命にむさぼるように読んだという話が伝えられています。ちなみに、この『星学』を著した須藤伝次郎氏も高知県安芸市の出身です。五藤齋三が〝天文〟に興味を覚え、その知識を得た書籍。単に情報を得るためではなく、視野を広げ、異なる分野に興味を拡げる役割を果たしたに違いありません。
高知みらい科学館はオーテピアの5階に位置し、建物内には〝オーテピア高知図書館〟や〝オーテピア高知声と点字の図書館〟があります。プラネタリウムをご覧になった後、図書館でより深く、興味や関心を掘り下げてみてはいかがでしょうか?

(参考資料) 天文夜話(五藤齋三自伝)昭和54年発行

高知市役所で行われた天文幻燈講演会

創業当時の1吋望遠鏡群

若き日に〝天文〟に興味を頂いた五藤齋三ですが、その後、様々な仕事を経験した後、大正八年(1919年)に日本光学株式会社に入社。その後、大正十五年/昭和元年(1926年)に日本光学を退社し、9月1日、小型天体望遠鏡の製造会社として株式会社五藤光学研究所を創立しました。
当時高価であった天体望遠鏡を一般に普及させるために、齋三は全国の師範学校の校長や理科の先生、天文台などの職員に問い合わせを行い、当時の値段で30円~40円で販売することにしたため、口径三十ミリの単レンズを二十五ミリ(1インチ)にして、鏡筒はボール紙に白ペンキを塗った簡単なものでした。
会社創立からわずか2ケ月後の11月8日、齋三は高知市役所で天文幻燈講演会を開催しています。当時の記録によると、「会社設立後の宣伝は、まずは自分の郷里から行おう」と考えてのものであったようです。幻燈とはスライドのことで、今でいうビデオプロジェクターを用いた講演会のようなものです。当日は高知市役所で幻燈講演を行った後、市内にて、昼は太陽観測、夜は星や惑星の観測を二週間程継続して実施しています。この時の幻燈講演会は大成功に終わり、五藤光学研究所の創業が郷里で祝われた形となりました。
齋三は、この後も高知で頻繁に講演会や観望会を開催しており、後述する南国土佐大博覧会(1937年)や南国産業科学大博覧会(1966年)では、天体望遠鏡やプラネタリウムを通じて、高知の人たちに〝天文〟の楽しさ、宇宙の奥深さを知らせることを行っています。その根底には、自分がかつてハレー彗星の姿を見たり、書店で天文書と出会ったりした時のように、高知の人たちにも、〝天文〟に親しんでほしいという想いがあったに違いありません。

(参考資料) 天文夜話(五藤齋三自伝)昭和54年発行

高知にあったプラネタリウム

安芸市へ寄贈のS-1型プラネタリウム
安芸市立歴史民俗資料館

長年、高知県には常設のプラネタリウム施設が無く、今回、オープンした高知みらい科学館(オーテピア)が唯一の施設です。しかし、過去に遡れば三つのプラネタリウムが存在していたことはあまり知られていません。
高知県内に初めてプラネタリウムが登場したのは昭和二十五(1950)年で、高知市で開催された「南国高知産業大博覧会」に合わせて作られ、数年間運営されました。このプラネタリウムは数人の有志による手作りで、光源からの光が穴を通り、ドームに映る仕組みとなっていたそうです。コメットハンターとして名高い関勉さんも、若き日にドリルで一つ一つ「星の数ほど」の穴を開けたそうです。昭和四十年(1965年)には、五藤齋三が故郷の安芸市にプラネタリウムを寄贈し、このプラネタリウムは昭和五十一年(1976年)まで運営されていました。この当時の投映機は安芸市立歴史民俗資料館に展示されています。
また、昭和四十一年(1966年)、高知市で開催された「南国産業科学大博覧会」にプラネタリウムが設置されました。その後、高新プラネタリウムという名称で昭和四十九年(1974年)に閉館しました。
今回、高知みらい科学館に設置されたプラネタリウムは、約40年ぶりに高知に誕生したプラネタリウムということになります。現在、50歳以上の方の中には、昔、高知や安芸にあったプラネタリウムをご覧になった方が居られるかもしれません。昔のプラネタリウムと異なり、高知みらい科学館のプラネタリウム〝オルフェウス〟は一つ一つの星が小さくて明るく、星の色や〝またたき〟も表現されています。プラネタリウムをご覧になったことがある方も、初めてという方も、是非、高知みらい科学館にお越しください。

(参考資料)高知市広報「あかるいまち」2015年9月号 / こうちミュージアムネットワーク 高知みらい科学館 学芸員 岡田 直樹

関勉さんと五藤齋三

芸西天文台
60cmニュートン式反射望遠鏡

コメットハンターとして名高い関勉さんと五藤齋三の出会いは、昭和十二年(1937年)に行われた南国土佐大博覧会まで遡ります。当時、関さんはまだ6歳の少年で、ご両親に連れられてお化け屋敷を訪れたそうです。お化けに追いかけられ、怖くて逃げ回って最後に飛び込んだところに太陽館と書いてある小さな天文台(ドーム)があり、そこで、五藤齋三から「坊やちょっとこっちおいで、面白いものを見せてあげよう」と太陽の黒点について説明されたそうです。その時、見た黒点の美しさや、数は、今でも忘れないと関さんは述べています。
それから40数年後、五藤齋三が高知に大型望遠鏡を寄贈する話が浮上しました。その際、相談した相手が関勉さんでした。その後、紆余曲折を経て昭和五十六年(1981年)、高知県安芸市に口径60cmの反射望遠鏡が備わった「高知県立芸西天文学習館(芸西天文台)」が誕生。関さんはこの望遠鏡で多くの新天体を発見しています。
五藤齋三の夢は、76年後にやってくるハレー彗星をもう一度その眼で見たいというものでした。残念ながらその夢は果たせず、齋三は1982年にその生涯を終えましたが、奥様の五藤留子が夫の代わりに芸西天文台を訪れ、関さんの案内でハレー彗星を観測しました。その時、留子は、

ごとう星 りょうま星と共々に ハレーさがして 天かけりゐん

との歌を詠んでいます。この〝ごとう星(五藤)〟も〝りょうま星(龍馬)〟も、関さんが60cm反射望遠鏡で発見した小惑星です。
高知みらい科学館のプラネタリウムには、関勉さんが発見した数々の小惑星や、ハレー彗星の軌道を再現できる機能もあります。今後の投映の中で紹介されることがあるかもしれません。是非、お出かけください。

(参考資料)宇宙の放浪者 関勉 1993年発行 東亜天文学会彗星課

高知みらい科学館 プラネタリウム

オルフェウス・ハイブリッド

2018年7月24日(火)、高知みらい科学館が開館しました。同館のプラネタリウムは、直径12m 82席。納入したプラネタリウムは弊社が誇る最新型の光学式プラネタリウム「オルフェウス / ORPHEUS」と、全天周デジタル映像シシステム「バーチャリウムX/VIRTUARIUM X」が融合した「ハイブリッド・プラネタリウム」です。
「オルフェウス / ORPHEUS」は、国内外に30台以上の納入実績をもつクロノスシリーズの後継機種として昨年(2017年)に開発され、〝緻密で美しい星空〟を提供するだけでなく、本体だけ(全天周デジタル映像システムなし)でも、全88星座の星座絵を投映可能とする他、プラネタリウムに不可欠な様々な演出表現ができる機能を有しています。都会の星空から宇宙空間で見る星空や、薄明薄暮や夕日の色合い、月食なども再現する他、全88星座の星座絵や各種座標の投映も可能です。オルフェウスは、ギリシャ神話に登場する吟遊詩人。竪琴の名人として知られ、人や森の動物、木々や岩までもがその音色に耳を傾けたとされています。彼が奏でる音色のように、心に残る星空を映し出すプラネタリウムであることを願いこの名が命名されました。
高知みらい科学館では、解説員がその時々の天文現象や話題を解説する〝生解説〟にて投映プログラムが行われています。解説員の方の解説や操作により、多くの方々に星空の魅力が伝わり、自然への関心がより深まることを願っています。

高知みらい科学館プラネタリウムの施工にあたりましては、高知県・高知市のご関係各位を初め、佐藤総合計画・ライト岡田設計共同企業体及び大成・ミタニ・有生建設共同企業体の皆様方に大変お世話になりました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

※ ハイブリッド・プラネタリウム(HYBRID PLANETARIUM)、バーチャリウム(VIRTUARIUM)、オルフェウス(ORPHEUS)は日本国内における株式会社五藤光学研究所の登録商標です。

本件に関するお問い合わせ:  株式会社五藤光学研究所 クリエイティブカンパニー 企画営業 TEL 042-362-5366