2019.09.24 / トピックス

【星の和名】暮らしに寄り添う “オリオン座”の星々古くから日本各地に伝わる星の和名とその由来をご紹介します

五藤光学研究所は、限りなく自然な星空を再現するプラネタリウムを実現することで、見た人を本物の星空へ誘う機会を提供したいと願っています。そして、自然で表情豊かな星空は人々の想像を掻き立て、星々に想いを馳せる機会となると考えています。
9月25日発売の日経サイエンス11月号の弊社広告(裏表紙)では、7月号(5月25日発売)、9月号(7月25日発売)に続き、季節の夜空に輝く星の並びに、人々が想い描いた日本各地に伝わる「星の和名」をテーマに取り上げています。様々な呼び名で親しまれる星の和名は、その地の日々の暮らしの中から生まれています。第三弾は、冬を代表する"オリオン座" の星々が、季節や時刻の目安となっていた和名の一部をご紹介します。

[一等星(β星)から形成された呼び名]
■霜降り星(シモフリボシ )
霜降り星は、岐阜県奥揖斐で伝えられた星の名で、オリオン座の一等星「リゲル」のことです。夕方の東の空に煌めきはじめるころ、初霜を見ることから名づけられています。
 

[三つ星(δ星、ε星、ζ星)の並びから形成された呼び名]
■三星様(サンジョサマ /サンジョウサマ)
関東北部(群馬・埼玉・栃木地方)での三つ星の呼び名です。冬に夜なべ仕事を終える時刻の目安にしたり、夜明け前に西へ沈む様子を観察して、雪が降る季節の到来を知るなどの伝承があります。

■稲架の間(ハザノマ)
飛騨蒲田地方で伝えられている呼び名で、「ハザ」は、刈った稲を乾かすために、穂を下にして掛ける稲木のことです。秋の刈り入れの前後、東から昇る三つ星が「ハザ」の間から見た三つ星を名づけたものであろうとされています。

■土用三郎(ドヨウサブロウ)
土用の時期に三つ星が3日にまたがって水平線から一つずつ現れ、たて一文字に出そろう星の姿を見立てた呼び名。愛媛県壬生川地方では、「三つ星さまは、土用の一郎に一つ見え、二郎に二つ見え、三郎には三つ見える。」と漁夫たちが言っていたとされています。

■金突き(カナツキ )
漁具の「金突き」に見立てた呼び名で、瀬戸内や近畿の一部で伝えられています。丹後町間人(現在の京丹後市)では、三つ星が昇ってくる位置からイカ漁の頃合いを見計らっていたとされる記録があります。

[三つ星と小三つ星(θ星、M42、ι星)の並びから形成された呼び名]
■唐鋤星(カラスキボシ)
農具の「唐鋤」に見立てた呼び名で、三つ星だけでなく小三つ星、あるいは小三つ星以外の星を含めるケースがあります。和歌山県では、東の空に昇る時期を麦播きの目安にしていたとされる記録があります。

■六連(ムヅラ / ムズラ )
六連星というと一般的にはプレアデス星団(すばる)を指す場合が多いですが、東北地方の一部では、オリオン座の三つ星と小三つ星を併せた六つの星を「ムヅラ / ムズラ 」と呼んでいます。宮城県では、イカの釣れるタイミングを判断していたという伝承があります。

【第一弾】星の和名 "北斗七星" はこちら
【第二弾】星の和名 "さそり座" はこちら

【参考文献】
「日本の星 星の方言集」「日本星名辞典」 野尻抱影 著
「日本の星名事典」「天文民俗学序説-星・人・暮らし-」「星と生きる 天文民俗学の試み」 北尾浩一 著
「ふるさとの星 和名歳時記」 仙台市天文台 千田守康 著