2019.07.22 / トピックス

【星の和名】多彩な物語を紡ぐ “さそり座”の星々古くから日本各地に伝わる星の和名とその由来をご紹介します

五藤光学研究所は、限りなく自然な星空を再現するプラネタリウムを実現することで、見た人を本物の星空へ誘う機会を提供したいと願っています。そして、自然で表情豊かな星空は人々の想像を掻き立て、星々に想いを馳せる機会となると考えています。
7月25日発売の日経サイエンス9月号の弊社広告(裏表紙)では、7月号(5月25日発売)に続き、季節の夜空に輝く星の並びに、人々が想い描いた日本各地に伝わる「星の和名」をテーマに取り上げています。様々な呼び名で親しまれる星の和名は、その地の日々の暮らしの中から生まれており、第二弾は、夏を代表する"さそり座" の星々の和名の一部ご紹介します。

[星の並びから形成された呼び名]
■魚釣り星(ウオツリボシ / ウオツリブシ)
夏の時期、南の空に昇るさそり座のS字に連なる星々は、様々な地域で釣り針になぞらえた名前が付けられています。

[星の特徴から形成された呼び名]
■酒酔い星(サケヨイボシ / サカヨイボシ)
さそり座の目印となる一等星「アンタレス」は、赤星とも呼ばれ、山口県や大分県の一部では、酒に酔って顔が赤くなっていると見立てています。

■商い星(アキナイボシ)
「アンタレス」を中央に「τ星」と「σ星」を荷物と見立て、それを天秤棒で担いで売り歩いていることをイメージしています。また荷物が重いので棒がしなり、商い星の顔は真赤になったとされています。

[肉眼で見える二重星(μ1 μ2 / ζ1 ζ2 / ω1 ω2 / λ ν)から形成された呼び名]
■相撲取り星(スモトリボシ / スモウトリボシ / スモートリボシ)
さそり座の二重星がチラチラと交互に瞬くように見えることから、相撲を取っている様子に見立てています。
相撲取り星の候補には、いくつかの説があり、「μ1 μ2」、「ζ1 ζ2」、「ω1 ω2」 などが上げられています。

■脚布奪い星(キャフバイボシ)
天の川で水を浴びていた二人の天女が川から上がろうとした時、脚布が一枚足りなく奪い合いをしている様子を、二つの星がかわるがわる輝くように見える「μ1 μ2」と見立てています。

■蛍星さん(ホタルボシサン)
兵庫県の一部では、夏になると、田んぼの蛍が輝き、星空にも蛍が輝く。人々はそのような風景を想像し、「ζ1 ζ2」を蛍と見立ています。

■兄弟星(オトドイボシ / オトデエボシ)
岡山県や香川県のある地域では、鬼婆に追われた兄弟が、天道に助けをもとめ祈ると、天から釣り針のついた鎖が下りてきて、兄弟はそれに乗って天に昇り二つの星になったと伝えられています。さそり座のS字形の前半分を鎖、曲がった尾を釣り針、兄弟を「λ ν」に見立てています。

【第一弾】星の和名 "北斗七星" はこちら
【第三弾】星の和名 "オリオン座" はこちら

【参考文献】
「日本の星 星の方言集」「日本星名辞典」 野尻抱影 著
「日本の星名事典」「天文民俗学序説-星・人・暮らし-」「星と生きる 天文民俗学の試み」 北尾浩一 著
「ふるさとの星 和名歳時記」 仙台市天文台 千田守康 著